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子の引渡し事件~相談対応の留意点

離婚や別居に際して、親権や監護権が争われる場合、子どもの連れ去り(引き離し)が起こりやすく、直後の混乱期の初期対応いかんによっては紛争が長期化、複雑化するため、相談を受ける弁護士としても慎重かつ迅速な対応が求められます。

初期対応を誤らないためにも、以下のような点に留意しています。

1 子どもの安全を最優先すること
(1)警察への協力要請状況と、警察の対応を相談者から確認
 警察は共同親権者である夫婦間の子どもの問題に原則として介入しませんが、通報により臨場した警察による初期対応で事実上子の任意引渡しを受ける例は少なくありません。警察からの任意の説得に応じる場合です。一時的に感情的になり突発的行動に出た場合などは、長期的な監護養育を考えていませんから、早期に任意引渡ということがあるのです。したがって、警察の対応、反応を確認し、協力してもらえそうな感触であれば、警察に連絡をとっていく必要があります。

(2)児童相談所との連携
 連れ去った親がこれまでに暴力や虐待を行っていたような場合や、連れ去った親が監護養育経験に乏しく嫌がらせで連れまわしているなどの場合は、子どもが生命身体の安全を脅かされる危険があります。
警察に捜索願を出すだけでなく、児童相談所にも連れ回し、養育放棄等の虐待通告をしておくことになります。児童相談所への相談歴があると、家族に関する情報を児童相談所が把握しているときは、キーパースンから立ち回り先を確認してもらうなど、警察と連携して探索を行うことが可能です。

(3)居所のあたりをつけること
 弁護士が相談を受ける際、子どもの現状(どこにいるか)が確認できているかどうか、そこがとりあえず1~2週間は安全な場所かどうかを把握します。行方がつかめていないときは、保全事件の申立書をどこに送るかで頭を使います。管轄裁判所が子どもの住所地を管轄する家庭裁判所であり、また相手方(連れ去り親)が家庭裁判所からの通知を受け取る場所が判明しているかが、ポイントとなるからです。
 安否確認ができていないときは、親族や知人からの情報を多く集めて立ち回り先をあたります。場合によっては、弁護士から速達便で事件に関与していそうな親族に依頼書を送り、事件拡大防止に協力依頼をします。
 子らの居所がわかれば、任意の引渡しの要請書、申入書を速達便で送り、反応をみます。中には、弁護士が交渉窓口になったということで、単なる家族間、夫婦間の問題ではすまなくなったとして、任意の引渡しに応じる場合もあります。
 通常は子らの居所がわかっても、任意の引渡しに応じる例は少なく、要請書、申入書を速達便で送るのにあわせて、監護者指定・子の引渡し審判と審判前の保全処分の申立てを家庭裁判所にすみやかに行います。

2 迅速に対応すること
(1)迅速に動くこと
 子どもを連れ去られた親にとって、いてもたってもおられず、身を切られる思いで相談に来られます。一分一秒を争うことが多いので(特に安否確認ができていない場合)、依頼を受けた弁護士としては、家庭裁判所の判断を少しでも早く仰ぐべく、保全事件の申立てを急ぎます。
 保全事件であれば当然のことですが、相談依頼の当日か翌日に事情の聞き取りを行い、事件の経緯に関する陳述書を作成し、戸籍謄本など必要書類を当日または翌日に取り寄せて、審判申立書を急ぎ仕上げ、ご本人に確認してもらったうえで、2~3日内に家庭裁判所に持ち込むこができれば最短の対応となります。本籍地が県外などの場合、戸籍謄本の取り寄せに数日かかる場合もあるので、複数のメンバーで手分けして保全準備をしていくことになります。

(2)離婚問題よりも、子どもの連れ去り事件対応を先にすること
 夫婦間の離婚問題と、子の監護者指定・引渡しの問題は切り離して考える必要があ
ります。
 前者の問題は夫婦間でじっくり話し合って解決すべきですが、特に離婚・親権の問
題について対立が激しい時に子の奪い合いの紛争は生じますから、まず後者の問題解決を先に行うことが大切です。
連れ去り事件が起きたとき、夫婦間で話し合いなさいと助言しても何の解決にもな
りません。時間だけが経過してしまうので、注意が必要です。
 実際にも、監護者指定・子の引渡し審判事件(保全事件を含む)が申し立てられた
ときは、離婚調停はいったん進行を止めることが多いです。子どもの監護環境につい
ての取り決め、判断がなされないと、親権を含めた離婚に向けての話し合いの前提が
できないからです。

(3)調停よりも審判で
 監護者指定・子の引渡しは調停での解決になじみにくいです。調停は話し合いなの
で、任意の引渡しに応じない相手と話し合いを試みても時間が経過するだけです。解
決を急ぐうえでは、審判の申立て(あわせて審判前の保全処分の申立て)が不可欠で
す。
 もちろん、保全事件で仮の引渡しがなされたり、暫定的な共同監護の合意ができた
後に、本案の監護者指定審判については調停に付され、離婚調停や面会交流調停とあわせて調停内で全体的解決をはかることもあります。

(4)法テラス利用の長短
 相談者が子の引渡しを求めて急ぎ対応の依頼があった場合、弁護士費用を一度に支払えなくて躊躇されることがあります。
 資力が十分でない方のために、一定の資力基準をみたしていれば、法テラスに申込み、審査のうえ、代理援助契約を結んで、法テラスから弁護士費用(着手金等)を立て替えてもらうことができます。
 問題は、迅速処理との関係で、法テラス利用の長短を検討しておくことが大切です。
 通常、監護者指定・子の引渡しの審判申立事件と、審判前の保全処分申立事件と、二つの事件を法テラスに申し込むことになります。申込みにあたり、戸籍謄本、住民票、所得証明書などの必要書類の取り寄せと申込書を記入していただき、法テラスに持ち込みます。審査には通常は2~3週間かかりますが、急ぎの保全事件についてはその旨を伝えて審査を急いでもらうようにお願いするわけですが、それでも法テラスの審査が通り、法テラスと依頼者、弁護士との三者間で代理援助契約書を取り交わすまで、1~2週間をみておく必要があります。そこから家庭裁判所に審判事件、保全事件の申立てを行いますから、滑り出しでかなりの時間をロスしてしまいます。悩ましいところですが、その点を十分検討する必要があります。

3 事件発生からの経過期間に応じた対応措置を選択すること
(1)事件直後
 連れ去り別居や違法な留め置き(引き離し)の場合に、事件直後はすみやかに家庭裁判所に監護者指定・子の引渡しの審判、審判前の保全処分の申立てを行いますが、事情の聞き取りの過程で、これまでの監護実績や双方の監護体勢の比較から、相談者(引き離された親側)が監護者に指定される可能性が低い場合は、そのことをきちんと説明したうえで、監護者指定を争うことが適切かどうかの検討を行うことになります。なかには難しいことはわかっていても、きちんと家庭裁判所の判断を仰ぎたいという方もおられますし、連れ去り別居の場合で、監護者は相手方に指定されたとしても、一日も早く子どもとの面会を実現したいということで、保全審問期日でそのことを伝え、面会条件や共同監護体勢の仮の合意をとりつけて、あとは対立緊張関係を緩和して、じっくり調停で話し合っていくという方もおられます。

(2)事件後に相当期間が経過している場合
 連れ去りがあって、その後かなりの時間が経過してしまうと、子どもは環境に順応する能力が高いですから、監護環境が劣悪化するなどの事情がない限り、引渡しを求めても、監護環境の変更を家庭裁判所が認めづらくなります。学校に通う子どもの場合は、転校を何度も繰り返すことにもなりますから、半年から1年を経過した後の引渡しについては、悩ましい問題を抱えます。そうした場合は、いきなり審判を求めるよりも、監護権あるいは親権について夫婦関係調整・離婚調停の中で、話し合う方法を選択する方が着地点を見出しやすいこともあります。
 また、別居後の監護環境が安定していることを確認できている場合は、監護者指定について強く争わず、面会交流の充実を求めて、面会交流調停を申し立てて、その中で調整をしていくこともあります。
 このあたりは、臨機応変な対応が必要となります。
 もちろん、別居後かなりの期間が経過している場合でも、子どもを取り巻く環境が大きく変動し、監護環境が劣悪化することもありますから、そうした際は保全事件の申立てが必要となることもあります。

4 執行まで視野に入れた対応を検討すること
 子どもの引渡しについて審判申立てをするにあたっては、保全事件で仮の引渡しの決定があったときに、2週間以内に直接強制の申立てをして、執行官と打合せのうえ、連れ去り親のもとに出向き引渡しの執行を行う必要があります。この2週間はあっという間に経過してしまいます。執行官と現場に出向くことも1回なのか、2回なのか、限られた時間の中で、日程調整が必要となります。
 また、家庭裁判所の判断が出ても、それに従わない事案もあり、保全執行が執行不能で奏功しないこともあります。そうした場合は、最終手段である人身保護請求について検討する必要があり、限られた時間の中で、並行して準備を進めておくことが大切です。引渡拒否の姿勢が明白な事案などでは、早い段階で人身保護請求を検討しておくことになります。

5 あらゆる手段を尽くし、常に選択肢を広げておくこと
 家庭裁判所への迅速な審判申立て、保全申立てが必要ではありますが、連れ去った側の親も一時的な感情が沈静化したり、長期的な監護体制の見通しが立たなくなるなど、元の状態に子どもを戻したいという気持ちに動くことも少なくありません。
 弁護士が介入したり、家庭裁判所に審判が申し立てられることで、任意の引渡しの可能性も一方で含んでいるため、常にその可能性を探ることも大切です。
 たとえば、審判と審判前の保全処分の申立てをして、保全事件の審問期日が指定された際に、任意の引渡しを再度促し、審問期日に子どもを同伴するよう申入書を相手方に発送することで、審問期日に子どもを連れて来てくれることがあります。審問期日前や審問期日に任意の引渡しが行われることもありますので、紛争が長期化しないよう、あらゆる方策を考えて準備しておくことが大切です。

 

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弁護士 川﨑政宏

弁護士 川﨑政宏
地域
岡山県
性別
男性
年代
60代
生年月日
(非公開)
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O型

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